たんぱく質摂取の増大は感染症による死亡を減らした
哺乳類の自然免疫の強さは、抗体や貪食細胞の生産力に依存している。従って、その材料であるタンパク質摂取が自然免疫の強さに直結してくることとなる。このことは動物実験や、栄養失調の起こりがちな途上国での疫学的研究からも明らかであり、戦後日本で寿命が延びたのは動物性タンパク質摂取量の増大による感染症(特に結核)の減少の寄与度が大きいと考えられている。
ヨーロッパにおいてもタンパク質摂取量が十分に増大したのは20世紀以降の話であり、20世紀初頭の段階では欧州のほとんどの国で今よりも平均身長が10cm低い状態であるほど栄養状態は悪かった。インフルエンザの一タイプにすぎないスペイン風邪があれほど致死的な病気として流行したのは、戦時中の劣悪な環境のほか、そもそものタンパク質摂取量の不足という要因もある。
http://hostdefense.ifrec.osaka-u.ac.jp/ja/report/2011/11/
「Malnutrition(栄養不良・栄養失調)」を中心とする問題は、学会テーマにある他の様々な要因が複合的に絡み合って成り立っています。すなわち、栄養失調は消化管の栄養吸収・防御機能の低下を誘発し、それはさらに感染症・下痢を引き起こし
http://www.m.kanazawa-u.ac.jp/nyumon/topics/topics05.html
古代から中世にかけて,いや,昭和の初期までもが,感染症のような流行る病気と栄養問題とがターゲットだったのです。
http://dock.luke.ac.jp/data/HealthCalendar/39/sukoyaka13OctoberNovember.pdf
肉や卵など、プロテインスコアの高い動物性たんぱく質を摂取するのは、免疫力を高め、感染症に打ち勝つためにも必要と考えられています。戦後、日本で青鼻を垂らす子供さんが少なくなったのは、動物性たんぱく質の摂取量が増えて、白血球や補体などの免疫力が強くなり、慢性的な蓄膿症になりにくくなったため、とも言われています。江戸幕府を開いた徳川家康は、庶民に肉食を禁じながら、自らは「薬食い」と称して、牛肉の味噌漬けを食べていたそうです。あの時代に現代の平均寿命にほぼ近い年齢まで家康が長生きできたのは、肉の摂取も一因にあるのかもしれません。
http://www.jmi.or.jp/qanda/bunrui2/q_033.html
戦後日本人の寿命は、結核など感染症の激減により飛躍的に延びました。その背景には、動物性食品の摂取増による栄養状態の改善があります。……栄養状態の低い国ではいくら抗生物質を使用しても、効果が見られない現実があります。感染症対策では、抗生物質と並んで栄養、とくに良質のタンパク質の摂取が重要です。タンパク質が十分なら免疫も強化され、細菌やウイルスなど感染症の原因に立ち向かえるのです。……現在も開発途上国では、タンパク質などが不足した低栄養状態から、子供のはしかや結核が重症化しています。また、各国のタンパク質摂取量とB型肝炎ウイルスの感染率を見ると、低タンパク質状態の国ほど、感染率が高くなっています。
http://kumamoto.lin.gr.jp/shokuniku/eiyochisiki/niku_protein/gekigen.html
戦後の復興が始まった昭和20年代の特に前半は食糧事情が大変に悪く、多くの人々が栄養失調の状態でした。そして、感染症が蔓延し、当時の死亡原因の第1位は結核、次が肺炎・気管支炎、続いて胃腸炎と死因の上位をすべて感染症が占めていました。……低栄養の状態では、結核の病状を著しく悪化させることが動物実験でも確認されています。また、栄養状態が平均的に良好であるとは言えない開発途上の国では、結核による死亡率が高いことからも、栄養と結核は深い関係があることを推定させます。
Men's average height 'up 11cm since 1870s'. BBC, 1 September 2013
http://www.bbc.com/news/health-23896855
Antonio D. Cámara, Joan García Román "Anthropometrics and development in Twentieth-century Spain: cohort trends and spatial patterns of height and robustness"
http://www.ub.edu/histeco/3encuentro/pdf/camara-garcia.pdf
1934-38年生まれのコーホート 166.4 cm
1969-73年生まれのコーホート 175 cm
(2014/12/20)