バブルかどうかは事後にしか分からないが、フラグの有無は事前に分かる

 バブル経済と言えば株や土地が必要以上に値上がりしてその後価格が落ちることを言うが、値上がりが起きているときに「あれはバブルだ」「いやそうではない」といった予測が飛び交う。この予測が正しく行われるならばバブル崩壊による悲劇も減るのではないか。ということで、すこしバブルの予測方法について考える。

 バブルの肝は株や土地の価格変動である。こういった株や土地の価格は“利率”を使って予測することができる。例えば株式であれば、一株の値段と一株の配当から利率に相当するものを計算できる。土地でもその土地の価格と土地を貸した場合の賃料から同じように“利率”が計算できる。土地や株の取引に市場メカニズムが働けば、これらの“利率”が等しくなるように株価や地価が上下するだろう、と推定できる。上述のメカニズムより、株の価格であれば会社が出せる利益や保有資産などから“適正価格”が推定でき、土地であればその土地の賃料相場から“適正価格”を推定できる。

 さて、ここまでの説明では、《今の》価格が今期の配当・賃料から推定できることを示したが、配当や賃料はいつまでも同じであるわけではない。会社が利益を出せれば配当は増え、都市が発展すれば賃料は上がる。配当や賃料が上がれば、それに釣られて価格も上がる。

 将来も持続的に成長すると期待される場合、安いうちに将来の値上がりを見越して買おうという投機が発生する。このような投機が発生すると、株や土地は“適正価格”より高くなる。ただし、ある時点で“適正価格”より高かったとて、その時点では問題にはならない。後々実際の成長が追いついてその価格が新しい“適正価格”になれば、それは狙い通りの適切な投機であったと言うことができる。

 しかし、将来を完全に予測できるわけではない。成長が予想の手前で鈍化することもある。アメリカのいわゆる“狂騒の20年代”の時期や、日本のバブル景気の時期には、ただずっと値上がりするだろうという期待感だけで実際の“適正価格”を無視して買われていた時期もある。成長が鈍化してなお“適正価格”より高い状態はある程度持続できるが、一定期間たって借金返済などの要因で資産を売り払う必要性が生じると、値段が維持できなくなり、やがて価格が下落することになる。

 “適正価格”より高い状態は、いわば「バブルフラグ」が立った状態である。フラグが立っている状態で、成長予測を見誤らず後から“適正価格”がちゃんとついてくればそれは“ソフトランディング”と呼ばれることになる。ついて来ず大きな値下がりが生じれば“ハードランディング”と呼ばれるだろう。

 つまり、結論を言うと、“適正価格”からの乖離を見ることでバブルのフラグが立っているかどうかはいつでも分かるが、終わってみなければそれがバブルか否か結論は下せないということである。

 リーマンショック前のアメリカ不動産市場や、今の中国土地市場は値上がりが終わっていないのに双方とも“バブルだ”と警戒されていた(る)。これは“適正価格”からの乖離というフラグを見ているわけである。このフラグを見れば“バブルになりうる種”は判別できる。

 中国の土地はこのフラグが上がりっぱなしなので、数年間「中国はバブル」と言い続けている人もいる。これは、崩壊していないので間違いと言う見方もできるし、今成長が止まればバブル崩壊になると予測されるのであながち間違いとも言えない。フラグが安全に下ろされる可能性もあるし、本当にそのまま崩壊に達するかもしれないが、その予測を全世界の人が信じるような精度で行うのは難しいだろう。

 「バブルだ」と言われているものに手を出すときは、上述の“適正価格”“フラグ”“実態からの成長予測”について考えると冷静に判断できるかもしれない。

(2012/04/19)