日本がGlobal gender gap indexを改善するにはどうしたらいいか

日本はGlobal Gender Gap Report 2015で低い成績となっています。ではこれを改善するにはどうしたらいいでしょうか。それを探るため、内訳をみていきたいと思います。

(中略:後でこちらこちらの図を入れる)

 日本は教育・福祉分野ではよい状態にあるといえますが、《女性管理職の少なさ》《女性政治家の少なさ》の2点、すなわちエグゼクティブ職の少なさが大きく順位を落とす原因となっています。女性と男性の賃金比もあまりいい順位とは言えませんが、これは女性エグゼクティブが増加すれば自然と解消する範囲内にあると考えられます。

 ではなぜ日本では女性エグゼクティブが少ないのでしょうか。それについてまとまったフィールドワークを行ったのが中野円佳さんです1 2 3。彼女の調査結果の大意はこのようなところです。

①働きやすさよりもやりがいを重視してハードな職場を選び、②自分と同じくらいハードワークな夫と出会って結婚するために、育児と仕事の両立が回らなくなってしまう――。

こういった配偶者選択(過去エントリでは《上昇婚》と呼んでいました)があるために、日本の男女平等が上手く実現しないトリレンマを生じさせており、ハードワークしない夫を選べば、育児と仕事は両立できないにしても、出産と仕事は両立できるのではないか――というのが別項での主張です。

管理職の長時間労働をなんとかやめればいい、という話がまず考えられるところですが、管理職は情報を集める必要からアメリカでも長時間労働になりやすく4、例えばYahooの女性CEOは産休を2週間しかとっていません5。情報を集めることに意義があるという点では政治家も共通しており、政府系の意思決定を行う職に就いた女性がワーク・ライフ・バランスをとることは不可能と職を降りた事例もあります6。この事情は日本でも同じであり、日本の女性議員へのインタビュー7では

「週に何度も、新潟と東京を往復しています」
「いまの選挙は、どれだけ地元に顔を出すかという、「ふれあい合戦」みたいなところがあります」
「両親や夫の協力がないと両立できませんね」

といったコメントが出ています。比例代表選出であれば「特定の階層・職業の代表」として産休をしつつ代わりの人に議員をバトンタッチすることも可能でしょうが、小選挙区の場合には有権者の代表という側面もあり、議員が有権者の意見集約を放棄できない、あるいは休んでいる最中に支持者を奪われてしまうといった事情により、なかなか休みにくい職業となっています。

 ただ、女性議員の発言には注目すべき点もあります。それは夫の内助の功に期待する――そういったことをしてくれる専業主夫を養うことです。アメリカではエグゼクティブ女性の配偶者の3分の1が主夫だった事例もあり8、女性の管理職・エグゼクティブを増やすには、管理職にワーク・ライフバランスは期待できないものとして、家事を配偶者(専業主夫)や外部にアウトソースするのが現状一番確実な選択ではないでしょうか。実際、アメリカでの横断的研究でも女性がキャリアを維持するには配偶者男性のキャリアを犠牲にしてもらうことが必要であることが調べられています9

 この構造をもう少し模式的に表すと、

  1. キャリアで配偶者や家庭外へ家事をアウトソースした女性
  2. キャリアだったが配偶者にハードワーカーを選んだことで自分はキャリアを降りた女性
  3. ノンキャリ女性

という3つになり、私や中野さんが《男女平等を阻害する配偶者選択パターン》として問題にしているのは2のケースになります。私のエントリにコメントしてるブログがあるのですが、このブログは長々と3を語り、余談として1を扱い、私や中野さんが最も問題にしている2のケースをまったく扱わずにおり(2のケースは先方のブログのデータではキャリアを降りた女性と最初からキャリアでない女性を区別できず3について語っているところに混ざっています)、私としては引用してもらっているのはいいけどちょっと筋違いな感じもしています。先方のブログでは《男女平等を阻害する配偶者選択パターン》を《上昇婚》と呼ぶのが気に食わないようなので、その点については考慮します。

(2016/5/5)


  1. 中野円佳 「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? 光文社 2014 ↩︎

  2. 中野円佳 育休世代のカリスマが、会社を"降りた"ワケ あの話題の筆者が陥ったジレンマ 東洋経済オンライン 2015年04月02日 ↩︎

  3. 中野円佳 総合職の働き方に変革を迫る「育休世代」のジレンマ 2015年1月22日 規制改革会議資料 ↩︎

  4. ROSENBERG, Samuel. Long Work Hours for Some, Short Work Hours for Others: Working Time in the United States. In: Working Time Patterns: In Search of New Research Terrorities beyond Flexibility Debates, 2009 JILPT Workshop on Working Time. 2009. p. 71-86. ↩︎

  5. 米ヤフーCEO、双子を妊娠 産休は短期間 日本経済新聞 2015/9/1 ↩︎

  6. 池田美樹 アメリカに広がる専業主婦志向:本当に満足できる人生って? huffingtonpost 2013年06月04日 ↩︎

  7. “ママ議員”も大丈夫じゃない NEWS WEB 2016/10/13 現在は期限切れしている。当時記事を取り損ねたためメモ書きから復元している。 ↩︎

  8. 土方奈美 米国の“専業主夫”事情エリートビジネスウーマンを支える「内助の功」 2012年7月10日 ↩︎

  9. 治部れんげ 稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換 勁草書房 2009 ↩︎