性犯罪者を罰する方法

 性犯罪加害者は勝ち続けてきたというブログが話題になっていたので、少々メモ書きをしていく。

 「加害者に有利すぎないか」という疑問であるが、これは先方のブログに書いてある通り、基本的に近代の司法が「疑わしきは罰せず」という方針をとっていることによる。強姦や強制わいせつ罪は、暴行・脅迫による=合意のない性行為を構成要件とするため、合意があれば罪は成立しない。これを「疑わしきは罰せず」というルールで裁いた場合、①合意がなかったと明らかに認められる証拠があり(例:抵抗した証拠)②その人物が性行為を行った、という両方を立証しなければならない。このハードルが高いのではないか、というのが先方の記事の趣旨だが、基本的には「冤罪を防ぐために疑わしきは罰せず」という点に限れば、「他の犯罪と同様に」甘い、というところだろう。

 「性犯罪は加害者に有利なのではないか」という意見が生じてくる大きな原因は、性行為は通常同意書などの明白な証拠を残さず行われることが多数であるため、基本的に口頭ないし“雰囲気”による合意があったと推定せざるを得ないことによる。先方では「性犯罪ほど、被害者がジャッジされる犯罪はない」としているが、構成要件上合意があったかどうかが争点になるので、合意の有無をジャッジすることになるのは避けて通りようがない。「虚偽申告率は2~10%」とのことだが、これは「疑わしきは罰せず」の原則から言えば調べざるを得ない高さである。性犯罪の加害者はあまり多くはなく、加害者でない男性やその家族のほうがずっと数は多いため、その人たちがとばっちりを恐れる声のほうがどうしても勝ってしまう。

 この問題を乗り越えるもっとも簡単な方法は、同意の有無をより確実に判定できる外形となる条件を抵抗の有無など現行の裁判で採用されているもの以外にも増やしていくことである。例えば、酩酊している場合にはあらゆる民事契約での同意能力はないとみなされるため、その状態で行った契約は無効とされる場合がある。酩酊していたのであれば性行為についても合意能力がないと見做し、レイプであるとみなすのが現代の潮流であろう。ただ、性行為に参加した両者がともに酒を飲んでいた、という場合は多い。この時に外形主義を採用するとどうなるか――男が女をレイプで訴えることが容易になる。最近そのようなケースが三面記事ではあるがニュースになった1。男性側としては訴えられるリスクを抑えるためには先制して訴えるのが一番早いため、外形的判断をハックされて女性側がレイプで訴えられることも相応に増えるであろう。

 性犯罪を法廷で裁いていく最も効果的な方法は、セックス同意書に事前署名するといったことを性行為の要件にし、それ以外の性行為はすべて性犯罪として扱とことであろう。現実的かどうかは別として、理論上はこれで成り立つ。被害者をジャッジすることなしに性犯罪の判定を確実化していくならば、これが最も現実的である。

 とはいえ、「セックス同意書は現実的ではない」という意見も多くはあるだろう。筆者は中間的な方法として、「女のセックスへの合意を避妊具を買うという行為で意思表示する」という方法を提案している。道中で女がゴムを買えばGo、ゴムを買わなければしない、というマナーが社会常識とし通底していて、それが裁判でも同意の有無の強い証拠として扱われるのであれば、同意書よりムードを壊さないという程度で話は通じるようになると考える。

(2018/05/14)