ドイツにおける最低賃金導入の簡易的な事例分析

 2015年1月よりドイツ国内全労働者と全産業で最低賃金が導入された(今まではギルド的に業界別で決められてきた; 美容師などは最低賃金が無かったために低賃金であったことが知られる)。その結果が徐々に報告されてきているが*1*2、最低賃金導入・引き上げによる議論が分かりやすい形で表れてきているので、取り急ぎメモ代わりに記述していく。

 まず総論としては、370万人(試算)が恩恵を受けていると政府は説明し、Die Weltは24万人が職を失うなどの影響を受けたとしている。消費者物価指数は4カ月連続で上昇しているとのことで、値上げによって財布のひもが固くなったり、あるいは最低賃金を支払えず雇い止めがあって消費が落ち込むということにはなっていないようで、「格差を埋める」という目的からして、トレードオフとしては許容できる範囲だろう。ただし、最低賃金導入・引き上げが格差を拡大させてしまう「負の面」も同時に観測される。

Besonders betroffen ist danach Ostdeutschland: Sachsen-Anhalt und Thüringen verzeichnen in den ersten drei Monaten die stärksten Rückgänge mit 7,7 und 6,6 Prozent. Im Bundesschnitt beträgt das Minus 3,5 Prozent – und ist damit vier Mal so groß wie ein Jahr zuvor. Im Vorjahresvergleich sank die Zahl der geringfügig Beschäftigten um 2,8 Prozent oder knapp 190.000.

 最低賃金は、最低賃金以下の売り上げしか計上できない労働者を排除する“労働者の足切りライン”として働くため、本当に貧しい人が失職して困るという結果を生むことが指摘されるが、ドイツの中でも相対的に貧しい東独地域ほど失職者率が高いのは、モデル通りの結果と言ってよいだろう。現在のドイツは南欧を犠牲の羊として好景気を謳歌しており、比較的最低賃金を引き上げやすい状況にあると考えられるが、それでもこのような効果が観測されることは注意が必要だろう。

 ケインズ的な考えでいえば、賃金の下方硬直性はデフレ・不況と密接な関係を持つ。最低賃金引き上げは、不況期・デフレ期には悪影響が出やすい。一方で好況期・インフレ期で人手不足気味の時点で実施すれば、失職も少なく比較的スムーズに行くだろう。最低賃金引き上げには、まず金回りをよくして、良い時に実施すべきだということが今回のドイツでの最低賃金導入から推定できるところである。

Last modified:2015/06/04 20:57:31
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*1 Von Stefan von Borstel Mit dem Mindestlohn fallen fast 240.000 Minijobs weg Die Welt 19.05.15

*2 シュピッツナーゲル典子 ドイツ最底賃金法導入で得をした人、損をした人 2015年6月4日