グローバリゼーションの毒を和らげる

the puzzle has to be solved as to how it came about that right-wing populism stole the Left’s own themes. (右翼ポピュリズムが左翼のテーマを盗むという事態がどうして起きたのか、パズルを解かなければならない) ――Jürgen Habermas

 全体としては依然として高所得者が共和党、低所得者が民主党という住み分けとなっているものの、2012年との比較では低所得者(特に年収3万ドル以下の最低層)の急激なトランプ支持への転換があり、それが五大湖周辺などの諸州を奪うことにつながり、結果的にキャスティングボードを握ることになったと言える*1。ハーバマスの「右翼が左翼のテーマを盗んだ」という表現もこれを反映してのものだろう。

グローバル化と経済的摩擦

貿易の利益、比較優位

貿易の利益を破壊するもの(1) 貿易不均衡

そこはバーナンキが既存の経済理論では容易に切れない謎(コナンドラム)と認めているところであり、多くの経済学者がこれに挑んでいるところである。

*2

確かに貿易で双方貯蓄せず生産力を使い切って生産物を交換したのだと考えれば当然利益があるだろう。しかし、片方が貯蓄して消費を留保したならば、デフレに至る物価低下、賃下げ、過剰な金利低下などが起き、失業などにしわ寄せがいく可能性もあるだろう。

2000年代以降の貯蓄過剰は中国やドイツが目立つが、前世紀においては貯蓄過剰の主役と言えば日本であった。筆者別稿にて解説しているが、日本が米国債を保有しているのは輸出超過(過剰貯蓄)の帰結であり、この過剰貯蓄は1980年代にrust beltを大きく傷つけることとなった。そのRust beltは今回の選挙戦でトランプ勝利を決定づけた州でもある。

 なお私の認識としては、日本人の貯蓄過剰は日本人をも傷つけるようになったと認識しているが、それはまた別の話である*3

貿易の利益を破壊するもの(2) 労働力移動の摩擦

スーパースター効果

タックスヘイブン

巨大政府の不可能性

インドの総選挙ではコスト、キャンペーン費用など全候補者の総額で5000億円かかっている。大きな選挙区では当選にかかる費用は1.2億円に達し、この費用を調達するための汚職が絶えないという*4

あり得る解決策

終わりに

トランプ氏の支持者を嫌う必要はない。私たちが本当の米国人であれば、彼の支持者を敵と見るのではなく仲間と見るべきだ ――レディー・ガガ

 筆者は、Brexitやトランプの支持者をバカで低学歴で愚かで一分たりとも認めてはならないとする風潮が起き始めたことを危惧している。この民主主義社会において、敵を多くし味方を減らせば先細りになって負けるよりほかないだろう。必要なことは、Brexitやトランプに投票した人の傾向を分析し、そこからありうべき方向に誘導することだ。それはハーバマスの言うとおりであり、そのためにはレディーガガの言う通り「仲間と見る」しかないだろう。"Love trumps hate"とはそういうことだろう。そしてもう一つ、自らが「知的階級」であるという慢心は捨てるべきだろう。トランプの当選スピーチの後にこんな発言をしていたのでは、負けは必然である*5

It never occurred to me before this election that voters without college degrees outnumber those with by 3 to 1. Paul Graham 19:01 - 2016年11月16日

Thank you Orlando, Florida! We are just six days away from delivering justice for every forgotten man, woman and child in this country! Donald J. Trump 6:30 - 2016年11月3日

Last modified:2016/11/21 00:24:30
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References:

*1 [[How Trump Won the Election According to Exit Polls|http://www.nytimes.com/interactive/2016/11/08/us/elections/exit-poll-analysis.html]] The New York Times

*2 竹森俊平 世界的な国際収支の不均衡 日本の資本輸入で拡大も 2005年10月18日 日本経済新聞「経済教室」

*3 Eggertsson, Gauti B. and Neil R. Mehrotra (2014) A Model of Secular Stagnation, NBER Working Paper No.20574, October 2014 日本語解説

*4 堀本武功 インド人民党の大勝とモディ政権の行方 外交 Vol.26. 2014

*5 トランプが「忘れられた人々(低学歴者)のために」をキャッチフレーズにしていたにも関わらず、反対派が事後に「低学歴者のこと忘れてたわ」と気づいたんでは話にならない。ちなみにポール・グレアムはトランプの「低学歴が好きだ」発言を楽屋トークと思い込んでいる節があるが、実際はスピーチで公然と述べたものであり、低学歴者に対するアイデンティティ・ポリティクスを仕掛けたものである。事実関係も認識できないのなら、手の施しようがない。